第6章 【漫画サークル切込み隊長 その3】
「唯一救いだったのはそうやって仲間の為に切り込んで行ける奴は今までいなかったって言われたことだ。」
「何かそれわかる気がする。」
「そうか。木下は優しいな。」
「べ、別に。」
急に照れくさくなって木下はそっぽを向く。
「で、あのさ」
木下は我知らず早口でいった。
「そっちは相変わらず原稿描いてんのか。」
「うん、私はあまり作業早くないんだ。親がブツブツ言ってるけど別に成績下がった訳じゃなし。」
「好きだな。」
「楽しいよ。」
木下はいいじゃんとつられてニッと笑った。
「それで前から聞きたかったんだけど。」
「うん。」
「お前何でそんなに描くのにこだわるんだ、その、やめたいって思ったこととかはないのか。」
早口な木下の質問に真島はそうだな、と一呼吸置いてから言った。
「やめよかなって思った事はある。正直他の人の方が絵うまいの誰が見てもわかるし勉強カンケーないし。」
「でも続けてるんだよな。」
真島はうん、と頷き木下は何でと尋ねた。
「去年の文化祭の時さ、あ、うち冊子配ったり描いたイラスト展示したりしてるんだけど、そん時一人だけアンケートに書いてくれた人がいたんだ。冊子の漫画私のが一番好きだって。絵はアレだけど熱さがつたわって面白かったって。」
木下は思わず語る真島の横顔を見る。
「そん時思ったんだ、私はこの一言の為に描いてんじゃないかなって。そう思うとさ、やめらんなくて。」
「だから描くこととか描いてる人馬鹿にされると腹立つのか。」
「そうだな。」
真島は笑って頷く。
「描いて作るって簡単じゃないから。だって私のあの程度の絵でも相当の労力がかかるんだぞ、それを考えたら描いてる人とか描いてる事馬鹿にするってとんでもないって思う。」
やっとわかったと木下は思った。アンケートを書いた人も自分も感じた真島の漫画からの熱意、絵が下手でもわざわざ外に出てきてスケッチまでするくらいのそれはそんな描くことに対する思いから来ていたのだ。
「サンキュー、真島。やっとすっきりした。」
「事情はよくわからないが木下がいいなら何よりだ。」
真島は大変嬉しそうに笑った。