第6章 【漫画サークル切込み隊長 その3】
「相変わらず仕方のない人だな。不器用なんだろうけど。」
縁下はため息をつき、木下はとにかくよと唇を尖らせる。
「勝手に決めつけてったのが腹立つ。俺別に真島の事どうこうねーし。そりゃ滅茶苦茶怒ってたの初めて見たからビビったのはあるけど。」
「木下は」
ここで縁下が言った。
「相当真島さんが気に入ったんだな。」
「やめろって。」
「そうでなきゃそんなに怒らないだろ。」
「おい、縁下。」
「それはともかくとして」
「縁下、ずりぃぞ。」
木下は抗議するが縁下は別にと笑顔で流した。
「本人とっ捕まえて言ってあげなよ、俺は気にしてないって。」
おうと返事をするしかなかった。
そうしてまだモヤモヤしたまま帰宅した木下はベッドに寝転がりまたもらったあの冊子をめくる。真島の漫画、他より明らかに下手な絵、それでもちゃんと物語が出来ている。絵はあれだけど物語としてはこの冊子に載っている中で一番だと思う、まるで物語なら負けないと言っているかのような。そこまで考えて木下はガバッと起き上がった。
「そっか。」
木下はひとりごちた。ぼんやりしていた聞きたいことがやっとはっきりわかったと思った。
そして次の日、何と木下は昼休みに2-5の教室を訪れて真島優子を呼び出した。
「木下。」
当の真島は意外そうに声を上げる。何でびっくりしてんだよと木下は苦笑した。
「ど、どうした。」
「そんなにキョドんなよ。」
「いやしかし予想だにしなかったしその昨日あれだったし。」
木下はクスクスと笑う。
「そうだお前ひでえじゃん、俺何も言ってないのに言いたい事だけ言って引っ込んでよ。」
「しかしあの状況普通は」
「俺、別に気にしてねえから。」
言い切られて真島はキョトンとし、木下はちゃんと言えたと内心ホッとする。
「つかお前すげえよな。」
「そうかな。」
「俺だったらあんな事あってもあそこまで言えるかなって。」
「言えるのが偉いかどうかはわからないぞ、実はあの後会長に怒られてな。」
「そーなのか。」
「うん、ぶっ飛びが過ぎる落ち着け相手がもっとずるい奴ならこっちが悪いことにされかねないと言われた。」
でもと木下が思ったところで
「でも」
まるで狙って同調したかのように真島が続けた。