第5章 【漫画サークル切込隊長 その2】
「ごまかすなーっ、てかごまかせてないだろーがっ。」
「喋んなって言わなかったじゃん。」
「せめて縁下が攻め込む事くらい先に情報くれよ。」
「わりわり、忘れてた。」
「攻め込むってあのなぁ。」
「冗談はともかく悪気はなかったんだ、すまん縁下。」
「いいけどね、忘れられるよりかは。」
「ところで爪の先になんかついてるよ。」
成田に言われて真島はああいかんと呟いた。
「スクリーントーンのかけらだ。」
木下はつい吹き出し、つられたのか縁下と成田も吹き出す。
「そこいらに散らすなよ。お前んとこたどってもしょうがねえし。」
「ヘンゼルとグレーテルかよ。」
「成田のそれで思いついた、新入生の引き込みにでも使うか。そして縁下、何故に腹抱えてる。」
「何でもない。」
「縁下、震えてる震えてる。」
木下が言ったところで真島が漫画サークルのメンバーに呼ばれる。いつまでだべってんの原稿止まってるぞと言われて真島はおっと、と呟く。
「すまん、そろそろ戻るわ。」
「おう、またな。」
木下は手を振り成田、縁下と一緒に男子排球部の部室へと向かう。
「またな、ね。」
縁下がクスリと笑った。
「何だよ。」
尋ねるが縁下は答えず成田に目をやっても笑っているだけだった。
しばらくはそんな感じで木下は部活に行く前に漫画サークルがやっている教室によるのが習慣になった。大抵の場合真島は原稿にかかっていてそうでなくても何か紙にアイディアを書きつけたりしている。何度か行っている間にわかったが他のメンバーよりもその頻度が高かった。
何となくそれが気になった木下は一度真島がたまたま席を外している時に会長である生徒に聞いてみた。
「真島ってしょっちゅう何か描いてないスか。」
会長は描いてるねえと笑った。漫画サークルは基本ゆるゆるでメンバーのほとんどは何か描いてる半分喋ってる半分なのだが真島は何か描いてる7割な気がすると言う。
「7割てかなりでかくないスか。」
尋ねる木下に会長はこっちも適当に言ってるだけだけどと断りを入れた上で言う、真島はうちで一番描く事に執着してる、締め切りを破った事もないと。
「絵はうまいんスか。」
知らないんだと会長は言い、残念ながら絵なら自分含めて他の連中の方がうまいと言った。