第5章 【漫画サークル切込隊長 その2】
そうしてまた後日のことである。
「また行くのか。」
「嫌ならやめるけど。」
呟く成田に木下は言う。
「嫌じゃないけど不思議。そんなに気になるのか、何か聞きたいけど何かわからないって奴。」
「そう。」
木下は頷く。
「ついこないだ会ったとこなのに深い話になってるんだな、木下。」
自ら俺もとついてきた縁下が言った。真島に本気でクレームを入れるつもりだろうか。
「我ながら変な話とは思うけど。」
「いいんじゃないか、悪いとは思わない。」
縁下らしいなと思っているうちに漫画サークルがいる教室が近づいてくる。木下は足を止めて廊下側の窓を覗き込んだ。漫画サークルは若干騒がしい。真島が外向きの窓から半分身を乗り出して怒鳴っている。
「でーいうるせーぞテニス部っ、うちdisってる暇あったら走ってろっ。」
どうやらグラウンドを走っているテニス部の奴、真島の物言いからしておそらく相手は男子に何か言われたらしい。
慌てているらしき漫画サークルの連中がそんな真島の服を引っ張ったりして止めに入っている。こら真島やめろ先輩危ないです落ちます気持ちはわかるが少し落ち着けテニス部も真島に餌与えやがってもう、などと口々に言っているのが聞こえた。
「のっけからやってるな。」
「てかマジで危ないっ。」
成田が苦笑し縁下が慌てる。木下はおーと呟きちょっとだけ考えてから廊下側の窓からもうちょっと顔を突っ込んでみた。
「真島ー。」
そのまま木下は大きな声で呼ばわった。
「それじゃ田中の事言えねーぞー。」
「ちょと待てええええええっ。」
たちまちのうちに真島が反応した。
「木下っ、そらないだろっ。」
「いやお前ポジション被ってるし。」
「よせやい。」
真島は言ってこっちに来る。
「ところで今日はなんかあったのか。」
「いやちと顔見に来ただけ。」
「物好きだな。」
真島は笑った。
「て、あれ、成田はともかく今日は縁下付きか。」
「俺は雑誌の付録かよ。」
「そういう訳じゃないんだが。」
「で、誰が漫画のキャラみたいって。」
「木下。」
縁下ににっこり笑ってクレームを入れられた真島は恨みがましく木下を見つめる。木下は口笛を吹いてごまかそうとしてみた。