第5章 【漫画サークル切込隊長 その2】
「そーいや縁下の事も田中の事も知ってたよな。」
「ついでに言うと3組の西谷も一応知ってる。」
「何でまた。」
「田中はどっかの女子が男バレの田中がトランクス晒してた最低ってわあわあ言ってたのがうるさくて覚えてた、西谷は謹慎食らってたのが男バレで3組の奴だって噂されてたのを聞いた、縁下は田中とか西谷が名前呼んでたのが通りすがりに聞こえてた、漫画のキャラかお前ってな名前だったから印象に残ってる。」
「お、おぉ。」
ベラベラまくしたてられた木下は圧倒されてしまう。
「よくそんだけ聞いてるな、しかも覚えてるなんて。」
成田が感心したように言った。
「耳聡(ざと)いとはよく言われる。」
「それでも覚えてるもんか。」
木下が更に尋ねると真島はだってさと言った。
「君らそんなに人数いないし、そこへ一部話のネタに上るようなのがいたらそりゃ印象に残る。」
そういう問題なのかと木下は思ったが当の真島は当たり前だと思っている節があったのでそれ以上は聞かなかった。
「ところで私に何か用か。」
ふと我に返ったように真島が言った。
「いや、その、大した事ねーんだけど、」
木下は急にドギマギして言った。
「あれから大丈夫だったかなって。あ、皆には大体の事をぼかして伝えといた。名前出されるの嫌だろ。」
「ありがとう。」
真島は笑った。
「大丈夫だよ、木下は親切だな。」
「や、別に。」
親切なんてのは縁下あたりの担当だと木下は思い急に照れくさくなる。
「えと、原稿描いてんのか。」
「うん、ペン入れの真っ最中。あ、ペンのインク手についてんな取れっかなこれ。耐水性なんだよな。」
「なんかよくわかんねーけどスケッチもしたりして大変だな。」
「そっちも練習すごいだろうに。」
「まーボツボツ。」
そんな話をしている間横で成田が密かにクスクス笑っていた。
「成田はどうしたんだ。」
「さあ。」
木下はこっそり成田の足を踏みながらごまかし、うっかり話し込んだ事にも気づいて成田を連れじゃあなと慌ただしく去っていった。