第5章 【漫画サークル切込隊長 その2】
散々迷った挙句、次の日の放課後木下は部活に行く途中に漫画サークルがやっている教室に顔を出す事にした。成田も一緒である。
「思い切ったな。」
歩きながら成田が呟く。
「てっきりそのままスルーするかと思ってた。」
「まぁ別にそれでも良かったかもしれねーけど、何となく落ち着かなくてよ。」
「いいけど何で気にするんだ。」
「何でだろ。」
木下は少し考えた。
「知りてーことがある気がするんだ。」
「気がするって何だよ。」
首をかしげる成田に木下は言った。
「何か知りてーし聞きたいんだけど、それが何なのかよくわかんね。」
「また不思議な事言い出したな、大丈夫か。」
「正気だっつのっ。」
「冗談だって、あ、そろそろじゃないか。」
ふと気づけば漫画サークルが使っている教室がもう目の前だった。
漫画サークルが使っている教室はまた廊下側の窓が開けたなりだった。すぐ特攻する真島がいる事を考えると閉めた方が無難な気がするがおそらく暑いからだろう。木下は開いた窓から顔を覗かせてみる。やはり奥の方で漫画サークルの連中が静かに何か描いたり描いてなかったりしていた。声をかけようとしたが少し戸惑っているとメンバーの1人が顔を上げて木下と横にいる成田を見た。横にいる会長に何やら囁いている。会長は顔を上げて木下達にひらひらっと手を振ると真島ーと向かいでカリカリやっている真島に言った。
「んあ、何すか。」
顔を上げる真島、お客ー昨日の男バレの人と会長に言われてペンを置きすぐこっちに来た。
「やぁ、木下と成田だったか。昨日は本当、その、正直すまんかった。」
恥ずかしそうに俯く真島、昨日田中とやりあった時とはあまりに差がある。それに
「何で俺らの名前。」
木下は思わず尋ねた。
「恥を忍んで縁下に聞いたんだ、悪いか。」
口調はあれだが顔が赤い。照れているのがまるわかりである。