第4章 【漫画サークル切込隊長 その1】
とはいえ縁下の言葉は図星である。木下にとって印象的だったのは確かだ、田中に物申す女子そのものは別に珍しくないがああいう運動系とは間違いなく相容れないようなそれも寧ろ大人しくていいようにされそうなサークルに所属している女子が特攻してきた。しかも自分達の事をある程度認識していた。一体何だろうか。一度考えるとさりげにどころか本当に気になってきた、しかし今は部活の真っ最中だ。木下は寄り道しそうになった思考を練習の方に戻す。異変がまるわかりだったのか成田と縁下が大丈夫かと言いたそうな視線を投げかけていた。
いいのか悪いのか程なく練習中に真島優子とまた関わるきっかけが訪れた。外からドサッバサッという音がしたのである。
「何だぁ。」
コーチの烏養繋心が不審そうに眉根を寄せる。
「何か落ちたんでしょうか。」
顧問の武田も首をかしげる。この時木下は衝動的に行動した。
「俺、ちょっと見てきます。」
たまたま出入口に一番近かった所にいたから、もあった。しかしそれよりもあの時説明できない何かを感じたんじゃないかと後になって木下は思う。名乗りを上げる木下に排球部の一同は若干戸惑ったが、顧問の武田がじゃあお願いしますと言ったので木下はすぐすっ飛んでいった。
音がしたのは第二体育館の裏側で木下はすぐに音の原因を突き止めた。
「お前、」
呼ばれた方は尻もちをついたような格好でや、やぁ、と片手を上げて一応の挨拶をする。顔が赤い。足元には小さいスケッチブックや鉛筆が散らばっている。
「真島か。」
「あ、ああ君か。さっきに引き続いてすまない、すぐ行くから。」
言って真島は散らばったスケッチブックや鉛筆を大急ぎで拾い出す。
「何やってたんだよ。」
尋ねる木下に真島は早口で言った。
「漫画の資料にって思ってこの建物をスケッチしてたんだ。そんでもっと後ろに下がろうとしたらそこの木に気が付かなくて思い切りぶつかってだな決して男バレをストーキングしているとか何とかじゃないからご安心をって皆さんにも伝えてくれ。」
「お、おぅ。」
「じゃあな。」