第4章 【漫画サークル切込隊長 その1】
木下に口を挟ませる隙をほとんど与えず真島優子は散らばったものを回収して文化系サークルにしては結構なスピードで走り去っていく。ぽつんと残された木下は呆然とその後ろ姿を見送るしかなかった。
「何だよ。」
本能的に面白くないと思って木下は思わずひとりごちた。
「一方的に言うだけ言って。」
しかしエア文句を言っても仕方なく、これ以上時間を無駄にも出来ないので木下はすぐ体育館に戻った。
戻ってからは勿論どうだったか聞かれた。
「通りすがりの生徒が木にぶつかって転んじまって持ってたもん落としたみたいです。怪我とかはしてませんでした。変なことはしてないですすみませんってな事を言ってました。もう行っちまったっす。」
完全な嘘ではない。顧問の武田含めて大方の排球部の連中は納得した。しかし
「誰かかばってるのか。」
縁下はごまかせなかった。
その後木下はきっちり帰りに縁下と成田から詳細を求められた。
「また真島さんか。」
成田がボソリと呟く。
「スケッチしててドジったなんて漫画サークルらしいというか何というか。とりあえず妙な縁が出来た感じだな。」
「でもいいんじゃないか。」
縁下が言った。
「木下は何となく気になってるみたいだし。」
「俺は別に。」
「せっかくだから明日大丈夫だったかって見に行く感じで漫画サークルにチラッと顔だしたら。」
「変な噂たたねーかな。」
「それを気にするなら無理することないけど。」
縁下は言った。
「後は木下次第だな。」
縁下ずりぃと木下は思った。
その2に続く