第4章 【漫画サークル切込隊長 その1】
「その、そっちも」
木下はつい会長に首根っこをひっつかまれている真島に目をやり、漫画サークル会長はあははと笑った。真島もすぐ特攻するタイプなのだという。しばらくして漫画サークル会長はほら行くぞと真島を引っ張って教室の奥に戻る。当の真島の、はいぃとしょんぼりした様子で引きずられていく様が主将の澤村に引きずられる田中に似ていると木下は思った。
「田中もほら、行くぞ。」
ここで成田が言って田中をやはり引きずった。
「縁下がいねー時に勘弁してくれよな。」
木下は呟き、田中が成田から逃げないように見張りながら一緒に歩き出す。それにしても、と木下は真島の顔を思い浮かべた。すっげぇ奴だったな。
そうして男子排球部の部室に行き、着替えている時のことである。
「くっそおおお、あの野郎。」
「まだ言ってんのかよ、田中。それに野郎じゃねーだろ一応女子だろ口悪かったけど。」
まだ熱が冷めている様子がない田中に木下はボソッと言う。
「いい加減にしねぇと大地さんにバレても知らねーから。」
「お、おいよせよ木下。」
「何だ龍、どうかしたのかっ。」
「むしろ何をしたんだと心配になるんだけど。」
西谷や東峰まで話に加わる。
「それが」
成田が説明しかけた所へ日直で少し遅くなった縁下がやってきた。
「アレ、お前らどうした。」
面倒があったことが顔に出てたのかなと木下はぼんやりと思った。
そういう訳でまずは成田が事を話した。
「という訳なんだけど。」
「馬鹿。」
縁下が無表情で田中に呟き、田中が何だとぉっと声を上げるが当の縁下は無視する。
「文化系サークルにまで何やってんだよ、よく教頭に見つからなかったな。」
「わり。」
木下は俯(うつむ)く。元々は田中が問題だが止めきれなかった自分もどうかと思う。
「木下と成田は止めようとしたんだろ。話を聞かない、相手の挑発にも乗った田中が悪い。」
「ぐぬぬ。」
「え、縁下、そろそろその辺に。」
「旭さんダメです、こいつと西谷は何度でも言わないと。」
「俺も込みかよっ、力っ。」
「その場にいたらお前もうかうか参加しただろ。今後のために先言っとく。」