第4章 【漫画サークル切込隊長 その1】
「部室棟でうっかりトランクス姿晒した男バレの奴ってお前か。」
途端に田中がぎゃああああと叫び、木下は成田と一緒にぶっと吹き出した。
「てめーっ、よくも人の過去の傷口をっ。」
「うるさい、白昼堂々、あ、今夕方近いけど、うちのサークルを暗いだのなんだの通りすがりに言う野郎が何抜かす。」
「引きこもってるのは事実だろーがっ。」
「こーの馬鹿たれがっ、野外にスケッチに行ったんじゃあるまいし漫画の原稿を外で描けるか液晶タイプのPC持ち出すならともかく高校生の手に届くもんじゃないってのそもそも平らじゃないとこで原稿描けるかっ、全くこれだから筋肉馬鹿は。」
「だあああああああっ、てめっちょっとこっち出てこいっ、勝負してやらぁっ。」
「馬鹿よせって田中っ。」
これはいけない。木下は田中の耳元で囁き、
「そもそも何で勝負するつもりだよ。」
成田も静かに呟くがいきりたった田中は聞いていない。おまけに相手の女子も女子である。
「ほほう、いいぜ。私が出来る範囲なら受けてたってやる。」
「そっちも挑発すんなよっ。」
木下は思わず突っ込んだが女子は首をかしげて微笑むのみだ。
「いい度胸じゃねーか、後悔すんなよてめぇ。」
案の定田中はヒートアップしている。
「そっちこそ、オタクをなめたら痛い目見るぞ。」
女子の方もニヤリとしたその瞬間である。こら真島っお前いい加減にしろっと上級生らしき女子が割って入り、真島と呼ばれた女子はゲッ会長、とたちまちのうちに青ざめた。
「いやしかしそもそもはそこの田中がうちを馬鹿にするからであって。ひぃぃぃっ、何でもないっスっ。」
ナイスタイミングだ、木下は成田に目配せをして察した成田が田中を羽交い締めにした。会長と呼ばれていた女子はうちの真島がすみませんでしたと言う。
「いやぁ、こっちもスンマセン。」
木下は冷や汗を流しながら代表して言った。いつもなら縁下の役回りだが縁下はいないし成田は田中を抑える方に忙しい。
「田中の奴他でもすぐああなるんで。」
大変だね、と同情されてしまった。