第3章 【慕う者】
一旦休憩入った時だ。
「ハアアア。」
縁下がため息をつく。
「心臓止まるかと思った。谷地さんも無事だったし志野のおかげで助かったよ。」
「それにしても何かツワモノきたな。」
成田が呟いた。
「むしろキワモノな気もするんだけど。」
俺は思わず言ってしまったところへ声がする。
「誰がキワモノだーって、ああすみません、木下先輩でしたか、失礼しました。」
「あ、う。」
俺は反応できなかった。他の1年と話していた志野が速攻こっち向いて突っ込んで来るなんてまさか思わない。聞こえてたのかってのもあったけど切り替えが早すぎる。それにもう、
「名前覚えたのか。」
「まだ苗字だけっす。明日になったら失礼ながらどなたかの分を忘れてるかもしれません。」
「いや、十分じゃねえか。ああでも縁下は忘れないでやってくれよ。」
「主将ですか、あのお名前と存在を覚えらんなかったツワモノでもいたんすか。」
「いやよく他校に存在忘れられるって悩んでるからよ。」
ハア、と志野は首を傾げた。
「忘れる奴は命知らずですな。」
「いや待てむしろお前の発言っ。」
俺は思わず突っ込んだ。
「へ。」
「へ、じゃねーよっ、1年でいきなり縁下をそんな扱いする奴初めてだわっ、逆にビビるわっ。」
「そう仰(おっしゃ)いますが木下先輩、」
志野は素で困った顔をした。
「さっき縁下主将があそこの、ええと田中先輩と西谷先輩でしたか、を無表情で威圧している現場を目撃してしまった以上あの方を恐れるなというのは無理な相談です。もちろん敬意は払いますが。」
「お前さ、度胸あるって言われねーか。」
「たまに言われます。俺気が弱いんすけど。」
「気が弱いとは。」
「どういう意味っすかっ、木下先輩っ。」
「そんまま。」
「ひでえっすっ。何すか、そのこんな気弱な奴捕まえてどこがだみたいな扱いっ。」
「確かに気が強い系じゃーねけど絶っ対弱くねーだろ。むしろうっかりいじめたら返り討ちにされそう。」
「木下先輩はいじめなんてくだらんことをなさらんでしょうに。」
「お前、いい奴だな。」
「普通っす。」
そんな話をしていたら田中と西谷がやってくる。