第1章 後ろの席の彼。
不思議そうな顔をしてる渋谷くん。
そりゃあそうやんね。
まだ手のひらに乗せたままやもん。
グーの手を。
「…………………」
変に思われてる事間違いなし。
でも、やっぱり恥ずかしい…って
こんな事してる方が恥ずかしいやん!
早く離さなきゃ!
と、指を少し開かせたら…
「あっ、」
渋谷くんの指が手の中へ入り込み
一瞬で消しゴムを持ってかれた。
そして、その消しゴムを見つめてる。
「すみません…ちゃんとしたのがそれしかなくて…」
渋「えっ、なら返した方がえぇよな?」
「大丈夫です。これがあるんで」
使えなさそうで
使える小さな消しゴムを見せたら…
渋「そんな小さいので消せんの?」
「消せます…だから、それ使って下さい」
と、前を向けば
さっき書き写そうとした
文字や図形は消されている。