第6章 相合い傘。
ヒヤヒヤした作り笑顔で
恐る恐る振り返れば
またもや無表情の渋谷くん。
雷が近くに居なくなった今
恐怖心は渋谷くんへ向いている。
さっき図書室で見た
優しい表情は
幻やったんやな、とさえ思うくらい
微動だにしない表情。
「………あれ…?」
ここでやっと異変に気付く。
おでこの少し上にあったはずなのに。
雷の怖さで
その変化すら気付いて無かった。
「いつ外したんですか?」
渋「何を?」
「前髪にあった苺」
渋「あぁ、あれは図書室行く前」
「えっ、なんで外したんですか。可愛かったのに」
動くと揺れる苺が。
と、最後まで言えなかったのは
私の制服の襟を掴んだままの
渋谷くんの顔が赤く染まったから。