第10章 片想い同盟。
香「そんな事あらへんって、ちょっとこっち見て」
「こ、こう?」
体ごと香絵ちゃんに向ければ
前髪へ手をかけられて。
真剣な顔で
いじられる。
しばらくされるがままで居たら
顎を少し突き出すように言われ
そうすれば「今日はこれしか無いから」と
グロスが唇に塗られて行った。
香「は元が良いからちょっと手を加えたらだいぶ変わるねんよ」
「え?」
香「ほら、見てみな」
催促され鏡へ顔を向けると
そこには少し赤く色付いた
つやつやな唇の自分。
いつもの見慣れた顔じゃない気がして…
何だかドキドキする。
香「女の子は好きな人に可愛く思われたいからメイクとかがんばるんやで」
「そ、そうなん…?」
香「そうやの」
「じゃ、じゃあ香絵ちゃんが綺麗で可愛いのは大倉くんに……そう思われたいから?」
香「当たり前やん、やから女は恋したら綺麗になるとか言われんのよ」
と、教えてくれた香絵ちゃんの微笑みを見て
その言葉が本当やと信じられる。