第8章 おでこに…
手を引っ張られた勢いで
角も曲がり
驚く間もなく資料室の前へ着いた。
私の手を掴む手。
視線でそこから上へ辿れば
さっき傘を渡した彼の背中を捉える。
途端に胸の中で
温かい何かが広がり
トクトク、と
急に早く動き出した心臓。
「な、なんで居るんですか」
辿々しい私の声に
ゆっくりと振り向く。
少し乱れた前髪。
風は吹いてへんから
走って来たんかな…?
でも、息は切らせてへん。
渋「借りてくれな困んねん、俺の事」
「………へ?」
渋「嫌な事は何でも分け合う…それが友達やん」
と、微笑んだ渋谷くんが
一瞬だけヒーローに思えた。