第1章 夏の思い出作り(赤)
「友達も居らんのか。それは辛いよなぁ…分かるで?でも、1人でこんなとこ来る方が余計に辛ないか?」
「大丈夫です」
ほっといてよ、店員さん。
そんな哀れんだ目で見ないで。
1人じゃないから。
否定しないのは面倒くさいだけ。
もしかしたら、1人で来た方が
まだ、ましだったかもしれへんね。
「よっしゃ、よっしゃ。そんな寂し過ぎる姉ちゃんには、この優しいおっちゃんがサービスしたろ」
寂し過ぎる、は余計です。
何のサービスしてくれんのやろ?と
店員さんの手元を見てたら
カンカン、と卵が割られた。
あ、片手割りや。
すごっ!
片手割りしたら
いっつも黄身は潰れて
玉子の殻入れ放題になってまうねん、私。
この店員さんは
見事綺麗に割ったで。
無愛想やのにテクニックはあるんやね。
しばらく置かれた玉子がはっきりとした黄色と白になると、ヘラで焼きそばが乗せられる。
やだ、美味しそう。
見てるだけで涎が…