第1章 夏の思い出作り(赤)
「……すばるくん」
泣きそうになるのを
俯いて堪えてると
低い声がして。
慌てて顔を上げれば
いつの間にか目の前に
大倉さんの背中があった。
「本気で言うてんの?」
「やったら何やねん」
「何やねんちゃうわ」
「あ?」
「言い過ぎやろ」
「は?ほんまの事言うただけやんけ」
「………いい加減にしぃや」
声だけでも険悪な雰囲気が伝わって来る。
そうさせてたのは紛れも無く私で。
なら、原因である自分が
さっさとこの場から消えれば
2人は揉めなくて済むやんか。
カウンター席の端に置いてある
オーダーの時に使ってたメモを広げ
近くにあったペンで
自分の家の住所を書いてく…