第1章 夏の思い出作り(赤)
結局、お店を開けるまで…
や、開けてしばらく経った今も
変態とは目が合うどころか
会話すらしてへん。
カウンター席に座っり
何かを読んでて
背を向けられたままやし。
(後ろで纏めてる髪はもう見飽きたわ)
「今日も暇そうやなぁ〜」
畳の上に寝そべってる大倉さん。
お客さんもまだ来てなくて
店内には扇風機の回る音と
外から聞こえる蝉の鳴き声だけが響いてた。
経営の事は全然分からへんけど
暇で大丈夫なんやろか。
「そう言えば昨日の花火どうやった?」
寝そべったままの大倉さんが
起き上がって私を見る。
あ、花火の事知ってるんや。
「楽しかったです、めっちゃ。久々にしましたし」
「そっかそっか。じゃあ、すばるくんは?」
大倉さんの声に振り返って「俺?」と聞き返す変態の向こう側に見えたのは大人の雑誌で。
どんなに気不味い空気でも
そういう雑誌は読むんや。
もしかして…気不味いって感じてるのは私だけで
変態はそうでもあらへん…とか?
そうなると、じゃあなんで意図的に私を避けんねんって話やん。
ほんま意味分からん、何もかも。