第1章 夏の思い出作り(赤)
残りの夏はいつもとなんら変わらない
引き篭もるだけの日々を過ごすと思う。
あ、番号消しといた方がえぇよね?
(もうかける事あらへんし…)
思ったら即行動。
今、消しとかんと
明日にしたら
絶対消せなくなってるはずやから。
バッグに入れたままのスマホを
取りに行こうと体を起こすも…
「(起こしてまうかもしれん)」
起きられたら何となく困る。
(気まずくて)
電話切った後も
続きをしてくれる、って
期待してたんやもん…
もう会えないなら
最後に1回だけ
抱いて欲しかった。
芽生えたばかりの想いを
ひと夏の恋で終わらせたくて。
お望み通り
欲しくて堪んないくらい
惚れたんやから
責任取ってくんなきゃ。
最後までちゃんと良い思い出にして…
「渋谷さん、」
ベッドから降りて
見えない視界の中
寝てるであろう場所まで
近付いてく。
数歩歩けば足の裏にタオルの感触。
ゆっくりと座り込めば
起き上がる気配がした。