第1章 夏の思い出作り(赤)
「出して下さい、」
「は?なんでや。もう胃に入ってったわ」
「やったら指突っ込んで吐いて下さい。不味いの食べたらお腹壊しますよ。明日、お店どうするんですか」
「いや、不味ないしやな」
「……………へ?」
「ちょっと焦らしたろ思ってん」
「なっ、」
「めっちゃ美味い。、えぇ嫁さんになれんちゃうか?」
「……………なんか嘘っぽく聞こえますけど」
「そら嘘やからなぁ」
「撤収します」
「あ、コラ!腹減ってるんやから持ってくな!」
不味いんなら
食べんでもえぇのに。
無理されても困るし。
やから作るん嫌やってんよ。
料理上手い人って舌肥えてるんやから
口に合う訳無いねん、わたしの味付け。
「後でDVD見るからな」
「え…」
「せやから、はよ飯食え」
「はい…………って、待って下さい」
「ん?」
「なんで私のお皿しいたけだらけなんですか」
「さぁ?足生えてそっちに行ったんやろ」
明らかに私の見てへん隙に移した癖に
子どもみたいな誤魔化し方が
やけに可愛かった。