第1章 夏の思い出作り(赤)
お互い何も喋らず
お店の裏にある階段を上がり
車を停めてる駐車場へ向かう。
今、何時なのかは分かんないけど
灯りなんか全然無くて。
しかも、歩いてるのは私達だけ。
1人で歩くには気が引けるわ。
(良く歩けたな、昨日の自分)
なんてよそ見してた訳ちゃうのに
変態の肩に顔がぶつかった。
原因は私じゃなくて
変態がいきなり立ち止まったせい。
「急に止まるなら言って下さい」
「………なぁ、」
「はい?」
「頼みがあんねんけど」
「水着になれ、とか無理ですよ」
「ちゃうわ」
「じゃあ、何ですか」
「………の飯食いたい」
「え?」
なんか今、世にも恐ろしい言葉が聞こえた気がする。
私の料理を食べたい、みたいな。
別に作れない訳でもあらへんけど
変態の素晴らし過ぎる料理を知ってるから
作れる訳あらへんやんか。
「…………あかん?」
断ろうとしたのに
顔を覗いて聞くのは
狡いと思う。
プルプル、と
首を横に振るしか出来ひん。
そしたら、嬉しそうに笑って
グッと私を引き寄せ
また歩き出した。