第1章 夏の思い出作り(赤)
「、行くぞ」
「っ…あ、は、はい」
名前呼ばれるなんて
初めてちゃうのにドキッとした。
でも、こうやって
反応してるのは私だけ…
変態はめっちゃ普通で
ついさっきまで近くに居たはずなのに
いつの間にか花火入りのバケツを持って
水道近くまで移動し
待ってくれてる。
まぁ、遊び人にとっちゃあ
キスは挨拶みたいなもんやろね、と
変態の元へ歩き出した。
暗くて足元が見えない。
「っわ、」
突然、右足首がグニャと曲り
思いっ切り足から倒れ込む。
夜の海ってのは危険がいっぱいやね。
それに何も無いとこで転ける人って
あんま居らんよね…
暗いから言うても
変態には見えてるやろうし。
(ガシャンッて音がしたけど何やろ)
めっちゃ恥ずかしい。
「大丈夫かぁ?」
笑い声と一緒に
サンダルのペタンペタン、という音もして。
慌てて起き上がり砂を振り払う。
「だ、大丈夫です」
「ほんま手掛かる奴やな」
暗がりに慣れた目が
微笑んでる顔を見つけて
胸が一層高鳴った。
ここで大倉さんの言葉を思い出す。
"素直になりや"
「目離されへんやんけ」
と、笑いながらさっきまでバケツを持ってた右手が
私の手を取り歩き出した。
手を繋ぐなんてのも
初めてちゃうのに
めっちゃドキドキする…
この鼓動の早さは
自分の心が変態に
奪われた証拠。