第1章 夏の思い出作り(赤)
波の引いては打ち寄せる音の中
静かに重なり合った唇。
車の走る音が
遠くに消えて行ったのと同時に
ゆっくりと唇が離される…
「…………ごめん、」
喋れば唇に息がかかる距離に顔はあって。
謝られるとは思ってなかったから
どうしたらいいのか分かんないけど…
あまりにも声が申し訳無さそうで
首を横へ振る。
「帰ろか、」
「……はい」
スッと離れ花火の後片付けをし始めた。
何も出来ずに居る。
手伝わなきゃって
分かってても
どんな顔したら良いのか
どう接したら良いのか
分からない…
「っ、」
なんでキスしたの?
おかげで胸が
トクントクン、と
大きく鳴り出して…
ようやく暗さに
慣れ始めた視界が
映したのは
片付けしてる背中。
細めなその背中を
見つめてると
振り返るからびっくりして
少し狼狽える。
(多分、表情は見えてないと思うけど)