第1章 夏の思い出作り(赤)
ジッポの開く音が
すぐ近くで
聞こえる距離に居ても
流れる涙は見えないから。
少ししたら火薬の匂いに紛れて
煙草の匂いがして来た。
それがまた涙腺を緩ませる。
「、」
「………………はい?」
振り向いても
暗闇にまだ慣れてない目は
何も捕らえない。
やけど、頬に何かか当たる。
柔らかくて優しいそれは変態の手で。
「渋谷さん…?」
「ごめん…」
「え?」
流れた涙の跡を拭う指。
そして…
「…してえぇ?」
「へ…?」
「キス、」
「え、ちょ…」
指が動揺する私の唇を撫でたら
フワッと煙草の匂いが香りして
息をする間もなく
柔らかいモノが唇へ押し当てられた。