第1章 夏の思い出作り(赤)
「……………」
って、何考えてんのやろ。
帰りたくない、なんて思う訳ないやんか。
寂しいって思ったのも
楽しかったからであって
変態と離れるからとちゃうもん。
やのに、なんで向けられた背中へ
胸を痛めてるのか。
「……渋谷さんにはこの2日間ほんとお世話になりました」
「何や急に。どうしたん?変態呼びやなくなっとるし」
「最後くらいは呼んであげようかな、と」
「……最後って、まだ1日あるやろ」
「で、ですよね」
声が低くなるから
怒ったんかな、って
ちょっと焦った。
何も言わなくなるから
余計に焦り出す。
明日言えば良かった、と後悔。
お店の中には
電卓を打つ音だけが響き…
「…………………」
スマホで夜には
地元へ着ける時間帯の電車を見つけ
渋谷さんの作業が終わるまで
ゲームをして時間を潰していた。
そうやって気を紛らわせとかな
泣いてしまいそうな感じがしたから。