第1章 夏の思い出作り(赤)
「あーぁ、髪濡れちゃった…」
髪びちょ濡れ。
濡らさんとこって思って
アップにしてたのに。
「えぇやん、濡れたかて」
隣で岩場に背を預け
髪をパサッと広げて
掻き上げる変態。
ややっ、こんなとこにも
色気放出してる人が。
水も滴る良い男ってやつ。
「その色気分けて下さい」
「どうしよっかなぁ~」
「何その余裕な顔っ」
「ってか、要らんやろ色気なんか」
ふん。
色気ある人に無い人の気持ちなんか
分からへんわよね。
なんかムカつくから
海に手を入れて変態の体に
ちょっとだけ水をかける。
「まだやるんか?」
「むかつく」
「何がや」
「色気あれば彼氏出来るもん…」
色気より食い気を地で行く私。
何が悲しくて
変態に同情されて
思い出作りしにゃならんの。