第1章 夏の思い出作り(赤)
「……………なんですか?」
「これ、俺の番号。気ぃ向いたら掛けといで」
無理やり握らされる
小さく折られたメモ。
慣れてる感じからして
これがこの人の手口なんやな、と分かった。
焼きそばに玉子付けて貰って美味しかったし
無愛想やったけど
喋れば気の良いお兄さん(変態やけど)、と
結構印象は良くなってたのに…
まさか、チャラかったとは。
「ごちそうさまでした」
握られたままの手を振り払い
顔も見ずにお店を出る。
来た道と反対に歩き出せば
近くでかき氷を売ってるお店を見つけたから
そこで買って、可奈達のとこまで戻る。
途中、さっきの海の家の近くを通ったら
変態な店員さんではなく
少しガタイの良さそうな感じの人が
八重歯を見せた笑顔で
鉄板のところで接客をしてた。