第1章 夏の思い出作り(赤)
スープは喉の奥へ
流れ込んで行ったけど…
舌の上には
憎ったらしい玉ねぎが残ってる。
噛めない、飲み込めない。
「あかんかったか、ほれ出せ」
「うぇぇぇ~…」
差し出された手のひらに出す。
そしたら変態が
その玉ねぎを食べた。
(何気に間接的なあれやわ)
というか、何十年ぶりに
口の中に玉ねぎ入れたんやけど。
こうなりゃあ
お口直しに…
「ちょっ…おい!」
「いただきまーす!」
親子丼を丼ごと奪って1口食べる。
………何これ。
めっちゃ美味しい。
入れた瞬間で
いや、もう見た目からして
美味しかったけど。
変態のくせに料理が上手いって…
むかつくから睨む。
「何やねん、その目」
「美味し過ぎるのを表現してみました」
「絶対嘘やんけ。めっちゃ悪意ある目付きやったぞ」
「…………変態のくせに!」
「何がや」
「むかつくから全部食べます!」
親子丼をむしゃむしゃ。
この玉子のトロトロ具合、最高。