第1章 夏の思い出作り(赤)
「違います!違いますからね!かき氷は頼まれものです!」
「1人なんちゃうん?」
「友達カップルと旅行で来てるんです」
「それめっちゃ惨め。とことん寂しい奴やな」
なんか、無駄に2回傷付けられた気がする。
惨めで寂しいなんて
可哀想でしかないやん、私。
「どうせ、非リア充な夏休みです」
ほんとは彼氏作って
あはは、うふふな夏にしたかったさ。
夏なんて、イベントいっぱいあんのに。
別に好きで独り身な訳ちゃうし。
出来るんなら
今すぐ欲しいわ、彼氏。
「ほんならさ、」
「はい?」
テーブルに片手で頬杖を付き
じっと私を見つめ…
「楽しい夏の思い出作ろうや、俺と」
だなんて言い終えた後に
ニッコリ、と微笑む。
私は、今年の夏
人生で初めてのナンパ(?)をされた。
しかも、無愛想だった海の家の店員さんに笑顔で。