第1章 夏の思い出作り(赤)
「そうですね」
胸がツンと痛くなる。
自分がこういう状況を作り出したのに
全部、変態のせいにしようとしてた。
掴まれたままの手首を映す視界が
何故だか、じんわりと潤み始めてく…
泣くな、泣くな。
こんなとこで涙なんか流したら
泣けば許して貰える、と思ってる女だと
思われるだけ。
「…迷惑でしたね、」
「ほんまやわ。遊びたいのに遊びに行かれへんし」
「っ…やったら、今すぐこの手を離せば行けるじゃないですか」
「せやな」
手をあっさり離してくれた。
これでやっと帰れる。
そう思えば
今度は少し名残り惜しい感じが
するようなしないような…
いや、する訳無いやん。
「改めて、1日ですがお世話になりました。邪魔モノは消えますので…お姉さんと楽しい夜をお過ごし下さい」