第1章 夏の思い出作り(赤)
「大変ご迷惑お掛けしました、では」
「ちょ…」
バタンッとドアを閉め
部屋番号を確認して
郵便ポストへ向えば
変態が「待てや!」と出て来た。
待つ訳無いし。
足を早めるも
思った以上に力が入らなくて
追いついた変態に
後ろから手首を掴まれる。
「そんな体で帰ったらどんだけ時間掛かると思ってんねん」
「………うるさいなぁ」
「は?」
「私がどうしようと関係無いでしょ。昨日も言いましたけど、好きでこんなとこ来た訳じゃないですから早く帰りたいんです」
「…………せやったら連絡して来んなや」
そうやん。
元はと言えば
全部、自分が悪い。
バスが無いからって
泊まるところが無いから
歩いてでも
帰れば良かった。
待っとけなんて言われても
無視すれば良かった。
寝静まった後
抜け出せば良かった。
思い返せば
幾らでも帰れる機会あったやん。
変態からすれば
女の人と遊ぶ時間を
潰された訳やから
迷惑やんか。