第1章 夏の思い出作り(赤)
私の声はカウンター席から
顔を覗かせた変態の声に邪魔される。
そして、目が合えば
一瞬睨まれて
目を逸らされた。
「何?」
「ちょっと出て来るわ」
「タバコ?」
「ちゃうちゃう。さっきの姉ちゃんがそこまで送ってけ言うとんねん」
「ホストクラブちゃうで」
「しゃーないやんけ。すぐ戻るから」
「ほんますぐ戻って来てや。やないとちゃんが可哀想やん」
「………帰るらしいから知らんわ」
「えっ!?そうなん!?」
「ほんなら行って来る」
「ちょっ、すばるくん!」
大倉さんが呼び止めるのを無視して
お店の入り口から外へ出た変態。
その後ろ姿に
これで帰れるや…と
安心なのか良く分からん事を思った。
「ほんまに帰るん?」
「はい…1日だけでしたけど、楽し…」
「えっ、ちょっ、ちゃん!?」
グランッとなった視界。
体の力が抜けて行き
心配した顔で私を呼ぶ大倉さんの声が
どんどん遠くなってく。
可奈達に誘われて
海になんか来るんやなかった…
今年の夏は、今までよりも最悪や。