第9章 溢れる想い。
泣いちゃダメ。
そう思えば思うほど
涙は溢れてく一方。
泣き出した私を
腕の中へ引き寄せた。
泣いてる理由を聞く事もせず
ただ髪を撫でてくれている
優しい渋谷さん。
その腕の中でまた涙を流す…
「……ちゃん」
髪を撫でていた手が
頬へと来て
流れっぱなしな涙を拭った。
唇に息がかかる距離までに近付く顔…
「ありがとう…な」
控えめに唇が一瞬だけ触れ合う。
その"ありがとう"には
どんな意味が込められてるのか…
聞いてみたいけど我慢して「こちらこそありがとうございました…」と告げれば悲しげに微笑んだ。