第7章 どこまでも主役になれない。
唇がくっつく直前で
さっきみたく両肩を押し
渋谷さんの動きを止める。
普段、意思が弱く流されっぱなしなんだから
今もこのまま流されてばいいのに…
「………嫌やったか?」
「嫌じゃないです、」
「ならなんで…」
自分から一緒に居たいって
言ったくせに。
何されても良いって
言ったくせに。
とことん空気読めない女と
思われたはず。
だけど、自分の中の道徳心が
ダメだと邪魔をする。
付き合ってもない男女が
キスをするのはおかしいと。
「ごめんなさい…」
恐る恐る顔を見れば
目を逸らされ
何も言わずに離れて行った。