第7章 どこまでも主役になれない。
後部座席を降りたら
助手席のドアの前に立ち
緊張で震える手を
ドアにかけ
深呼吸してから開ける。
「失礼します…」
ゆっくりと乗り込んで
静かに腰を落とし
ドアを閉めようと手を伸ばせば
渋谷さんの手が重なり…
心臓が跳ね上がって
座り心地とか分かんない程
緊張で体も思考も固まった。
背中の右側が
渋谷さんに触れていて。
それが更に緊張させる。
クッと手が後ろに引かれ
ドアが閉まった。
「ちゃん、」
「っ…」
初めて聞く低めの声が
耳の中に入り
ビクンッと肩が上がる。