第7章 どこまでも主役になれない。
「渋谷さんっ」
「ちゃん、」
「何してるんですかっ、行きましょうよ!お腹空いちゃいましたっ!」
と、さっき繋いでくれてた手を
今度は私が握れば
控えめだけども
渋谷さんの顔に優しい笑顔が戻った。
それが嬉しくて顔が綻ぶ。
「……………せやな。あ、もしかしたら蟹あったんちゃうか?ここ」
「本当ですか!?」
「多分…あったよな?ヤス」
「え、あ…蟹は……どうやろ?聞いてみな分からへんなぁ」
と、歩き出した安田さんの後ろを
渋谷さんと手を繋いだまま着いて行く。
蟹あればいいんだけどなぁ…