第7章 どこまでも主役になれない。
「でも、ほら、しとかないと昨日みたいにハードル上げられたら困りますし」
「ハードル?」
「お前らのアイドルって言われて、すごいヒヤヒヤしたんですから」
「あぁ、あれは…しゃーない、実際そうやし」
「またまたまたぁー」
「いやいやいや…」
ふ、と視線がぶつかり
電話のやりとりを思い出す。
会いたい、なんて言われ
調子に乗り過ぎたかも…
「行こっか」
渋谷さんは、いつもと変わらない様子で
背を向け先に歩き出した。
その後ろを着いて行く。
いつもなら手を伸ばせば
辛うじて届く距離にある背中も
今日は、縮められそうにない。