第7章 どこまでも主役になれない。
ドックンドックン、と胸が鳴り始め
ゆっくりとマンションの入り口の方へ振り返れば…
「どこ行くん?」
と、微笑む渋谷さんが居た。
「一瞬誰か分からんかったわ」
「あっ…と、ダ、ダメですかねっ?」
ただ食事するだけなのに
メイクも着替えもしちゃうなんて
気合い入れ過ぎかな。
顔を隠すように
前髪を撫で付けてみる。
「ダメってか…そんなんせんでもえぇやん」
その言葉に
前髪を撫でていた
手が止まる。
胸がズキッと痛み…
「で、ですよねっ、」
はは、と笑う声が虚しく響いた。