第1章 秋の終わりは始まりの合図。
「じゃあ、一緒に行きましょうか?ちょうど帰るところだったんで」
「わぁ、助かります!ありがとうございます!めっちゃえぇ人ですね、お姉さん!」
「いいえ」
嬉しそうな笑顔を見て
可愛らしい人だな、と思った。
その笑顔につられ
自分の顔も綻んで行く。
「最近寒くなったと思いません?」
「思います。ちょっと薄着過ぎたなと後悔してたところなんです」
なんて、数分前に道を尋ねて来た人と
隣同士で少し距離を保ちつつ歩き
世間話的なモノを始めた。
人見知りしない。
それだけが唯一の取り柄。
「お姉さんは呑みに行ったりせぇへんのですか?」
「今から家で1人しっぽり呑みます」
「また偶然ですねぇ。僕も今から友達と宅呑みするんですよ」
「あ、そうなんですか」
偶然かぁ。
今、宅呑みって流行ってるから
そうでも無いような気がするんだけど…
と、思ってる間に
気付けば、もうマンションの下へ着いていた。