第8章 【卒業編】
「え、英二・・・その・・・そろそろいいかい?」
「あ、大石!うん、みんなあんがとね!」
席をはずしてくれていたみんながコートに戻ってきて、英二先輩が手を上げてそれを迎える。
こうやって冷静になってみると、私はなんて恥ずかしいことをしてしまったのかと、とても恥ずかしくなる。
「あ、えっと・・・その・・・皆さん、申し訳ありませんでした!」
「いや、かまわない。」
「うん、小宮山さんの気持ちはわかるからね。」
穴があったら入りたい、まさにそんな思いで謝ると、みんなが快く許してくれて、ほっと胸をなでおろす。
「それにしても小宮山よぉ、お前、水くせぇなぁ、水くせぇよ。」
え?、桃ちゃんのその言葉に首を傾げた。
「そりゃ、何にもできねぇかも知れないけどよぉ・・・俺達だって話しぐれぇは聞いてやれるぜ?」
「・・・あぁ。」
「ウィッス。」
桃ちゃん、海堂くん、リョーマくん・・・
みんな・・・ありがとう、そういってお礼を言うと、また目頭が熱くなる。
こんな私のことを慰めてくれる仲間たち・・・
そんな素敵な仲間に恵まれて、私は幸せなんだろう・・・
「フン、だいたいテメェ、自分1人が不安な思いをしているとでも思ってんのか?」
「え?」
海堂くんのそんな言葉を不思議に思っていると、何かを企んでいるような笑顔になった桃ちゃんが、私の肩に手をおいて、それからそっと耳打ちをする。
「そうそう、オレら、英二先輩に頼まれてんだよ、小宮山に変な虫がつかないようにしっかり見張ってろってさ。」
「・・・え?」
英二先輩がそんなことを?先輩も不安だったの・・・?
自分のことに精一杯で、そんなこと全然気付かなかった・・・
そう思って英二先輩のほうを振り返ると、思いっきり先輩と目が合って、雰囲気で何かを察知したのか慌てて駆け寄ってくる。