第8章 【卒業編】
「お前らーーー、璃音に何言ったんだよぉーーー!?」
「別になんも言ってないっすよ?なぁ、小宮山?」
桃ちゃんに同意を求められて慌てて頷いたけれど、う、うん、なんて声は上擦ってしまうし、かぁーっと顔も熱くなってしまう。
そんな私の反応を見た先輩は、あーーー!!!って声をはりあげて、キッと桃ちゃんを睨みつけた。
「アレほど言うなって言ったじゃん!それでもお前はオレの舎弟かーーー!!」
「だから、いつから英二先輩の舎弟になったんすかーーー!!」
必死に逃げる桃ちゃんを英二先輩が追いかけて、それをみんながみて笑いあう。
そんないつもの光景が、もうここでは見られないのかと思うと、やっぱりちょっと寂しくなったけど・・・
大丈夫・・・私達はみんな変わらないよね・・・?
「璃音!、ほいっ!」
桃ちゃんを追いかけていた英二先輩が何かを思い出し、ポケットから取り出して私に放り投げる。
弧を描いて手の中へと落ちたそれは、先輩の制服の小さなボタン・・・
第二ボタンだよん♪、そう言って私にウインクをして、また桃ちゃんを追いかけはじめた先輩を眺めながら、ギュッと胸の前でそれを握りしめる。
先輩、卒業おめでとう・・・
そして、ありがとう___
もう一度空を見上げると、空一面に広がっていた灰色の雲の隙間から青い空が覗いていて、キラキラと輝く太陽の光がいくつも射し込んでいた。