第8章 【卒業編】
「卒業したって、何も変わんないじゃん?」
「・・・変わるもん。」
変わってしまう・・・
高等部に進学したら、きっと素敵な出会いも沢山あって・・・
思い出すのは、英二先輩がもらった袋いっぱいのバレンタインチョコレート。
先輩の誕生日をバカな嫉妬で台無しにしちゃったから、いくら先輩がチョコを貰ったって、出来るだけ気にしないようにしていた。
だけど、気にしないなんてそんなの到底無理な話で・・・
特に不安な今は、余計に思い出してしまって・・・
高等部と中等部、校舎が離れてしまえば、気持ちも離れてしまうかもしれない・・・
素敵な人に告白されたら、その人の元に行ってしまうかもしれない・・・
先輩は新たな道を歩み出すのに、私だけ置いてきぼり・・・
「コラッ!」
「痛いっ!」
おでこを摩りながら、何するんですか・・・、そう先輩の顔を少し恨めしく眺める。
先輩のデコピン。
いつも反射的に痛いって言っちゃうけど、本当は全然痛くない・・・
「もう!、璃音はオレが卒業したら、オレのとこ忘れちゃうわけー!?」
先輩のその言葉に、そ、そんなこと絶対ない!、そう慌てて首を横に振った。
私が先輩を忘れちゃうことなんて、そんなの絶対ありえない。
だって、私、ずっと先輩のことが好きだった。
いつも天真爛漫で、元気いっぱいで、笑顔が眩しくて・・・
でも、それだけじゃない・・・
誰よりも繊細で、悩んだり落ち込んだり・・・
でも、最後は必ず自分で乗り越えて前に進んでいく・・・
そんな英二先輩が、ずっとずっと大好き___
「だろー?、オレだって同じだよん!」
先輩はそう言って私の顔を覗き込むと、いつものようにニイッと笑う。
先輩も同じ・・・?、だったら先輩は寂しくないの・・・?
私は寂しいよ・・・?、胸が苦しいよ・・・?
つぶれちゃいそうだよ・・・?