第8章 【卒業編】
「璃音~、おまたへ♪」
「!!」
灰色の空の視界に、突然英二先輩が現れて目を見開く。
胸が苦しくて気が付かなかったけど、もう既に先輩方が揃っていた。
「あ・・・」
「どったの?、ボーっとして。」
「あ、ううん・・・なんでもないよ?」
精一杯の笑顔を作る。
大丈夫、私、ちゃんと笑えている。
だって、台無しにしちゃう・・・
本当は先輩に卒業して欲しくない、なんて思っていることがバレたら、この和やかなお祝いムードをぶち壊しちゃう・・・
「小宮山!、ほら、アレアレ!」
「あっ・・・そうだ・・・」
桃ちゃんに促され、慌てて紙袋を取り出す。
みんなでお金を出し合って買った卒業記念のプレゼント。
順番に、先輩方に渡していく。
「卒業、おめでとうございます。」
「お世話になりました。」
「高等部に進学しても頑張ってください。」
そんなお祝いの言葉を添えながら・・・
先輩方はみんな制服のボタンが全部なくなっていて・・・
最後にプレゼントを渡そうと英二先輩の前までやってくると、先輩のボタンもやっぱり同じようにすべて綺麗になくなっていて・・・
それはもちろん、予想はしていたことだったけど、第二ボタン、ほしかったな、なんて、またズキンと心が痛んだ。
「先輩・・・卒業・・・」
「・・・璃音?」
おめでとうございます、なかなかその言葉を言わない私を、英二先輩も他のみんなも、不思議そうな顔をして見ている。
早く言わなくちゃ・・・渡さなくちゃ・・・
そう焦れば焦るほど、その言葉は出てこなくて・・・
「卒業・・・しないでぇ・・・」
気がつくと、言わなければいけない言葉とは正反対の言葉を口にして、その場に泣き崩れていた。