第6章 【ライバル編】
・・・あれ?
いつもお気楽な顔してへらへら笑っているえーじが、うつむいたまま動かなくなっちゃった・・・
さすがに落ち込んだかな?
・・・おい、えーじ?
「あ!いいものみっけ!」
落ち込んだかと思ったら、えーじが突然立ち上がり駆け出していく。
・・・本当に落ち着きがないやつだな。
ちょっとだけ心配したおれがバカだった。
そうだよな、コイツがあれくらいで落ち込むはずないよな。
えーじが走っていった先を見ると、おもちゃのテニスラケットとボールが転がっていた。
誰かが忘れていったのかな?
「玲音!テニス、教えてやるよ!」
はぁ・・・別にテニスなんかやりたくないもんね。
それに、やるとしたって誰がえーじなんかに教わるか。
どうせなら不二のおにーちゃんや桃にーちゃんに教えてもらうもんね。
えーじがおれの名前を呼んでラケットを振り回しているけれど、無視して滑り台で遊んでやった。
別に遊びたくはないけれど、あいつとテニスするよりマシだもんね。
あ、えーじのやつ、仕方がないから一人で壁うちしているや。
へへ~んだ。ざまーみろ!
だいたい、いちいち、ボールを打つたびに、ほいほいほいほい、煩いんだよ。
「きくまるびーむ」って、どんなビームだよ、ばっかじゃないの?
そんなに飛んだり跳ねたりする必要ないじゃん?
・・・ふん、えーじがテニスに夢中になってる間に黙って帰っちゃうもんね。
おれをしっかり見ていなかったんだ、あとでりおんに怒られて嫌われちゃえ!
おれはえーじに見つかんないように、こっそり公園から抜け出した。