第5章 【誕生日編】
「あ!、先輩、今・・・何時?」
「へ・・・?」
携帯を取り出すと、2人で時計を覗く。
23時52分・・・
「よかった・・・間に合って・・・」
「間に合ったって・・・?」
「先輩、お誕生日・・・おめでとう。」
「あ・・・あんがと・・・」
誕生日なんて璃音が心配で、もうすっかり忘れていた。
差し出された包を受け取ると、中に入っていたのはでっかい毛糸玉・・・?
「・・・これって・・・?」
「本当はマフラーだったの・・・完成してたんだけど、その・・・ほどいちゃって・・・」
「あ・・・!」
そうだ、オレ・・・璃音を探すことに必死だったけど、彼女にちゃんと謝ってない!
「その・・・女の子とのメールとか、ねーちゃんの友だちとカラオケ行ったりとか・・・ほんと、ごめん!」
「・・・ううん、それは・・・いいんです。」
「あと、オレ・・・別に、歳上が好きって訳じゃなくて・・・あん時のは勢いっていうか・・・」
「それも・・・もう、いいんです・・・」
顔の前で両手を合わせて、必死に頭を下げる。
璃音はそんなオレの謝罪の言葉を黙って聞きながら、淡々と「いいんです」を繰り返す。
「先輩が見つけてくれたから・・・先輩の誕生日の間に、先輩が私を見つけてくれたら・・・私、先輩のこと信じようって・・・そう決めてたから・・・」
良かった・・・そう言って璃音は、いつものようにやわらかく微笑むから、久しぶりにその笑顔をみたら、自然と抱きしめる腕に力が入って・・・
「オレ、歳上とか、歳下とか、そんなのカンケーなく、璃音が、大好きなんだかんな・・・?」
片方の手で髪に・・・頬に・・・そっと触れると、ゆっくりと顔を近ずける。
璃音が瞳を閉じて受け入れてくれたことを確認すると、そのまま唇を重ねあわせた。
空っぽだった心が、いっきに満たされていった____