第7章 truth
「はっはっはっ! まぁ、今はいい。だが佐伯が渡した封筒の中身を見たのなら、悠長なことも言ってられんぞ」
「まだ、見てない」
「……時間は有限だぞ、主。いい加減、甘さは捨てることだな」
「俺は甘いつもりなんてない。お前の口車には乗らない。お前のやり方を選んで、あいつらが傷付くのは俺が嫌だ。なら俺は俺のやり方で、俺だけが犠牲になる道を選ぶ」
「自己犠牲のつもりか? だがもうお前一人の身体ではないことを知るんだな。お前が犠牲になることで、誰が傷付くのだろうな」
岩融は鼻歌交じりに消えていった。理仁はただ、胸糞悪そうに顔を歪めて俯いた。
「国広……」
気付けば、山姥切の名を口にしていた。
月が隠れ、陽が昇り朝が訪れる。山姥切は未だ微睡みの中を彷徨いながら、あくびを噛みしめ部屋を出た。すると玄関の方で何やら音がしたので、気になって足を延ばしてみた。
「……理仁?」
「ん? ああ、おはよう国広。眠そうだな」
「いや……そんなことは。これから何処か行くのか?」
「走り込みだ。俺の唯一の日課だからな」
「……一緒に行ってもいいか?」
「別に構わないが、本当にただ本丸近辺を走り込むだけだぞ?」
「それも鍛錬の一種だ。付き合う」
山姥切はすぐに靴を履くと、理仁と共に玄関を出た。山姥切がそう言うならと、理仁も然程気にした様子はない。理仁が走り出せば、山姥切もその一歩後ろにつき走り出す。早朝ということもあり、まだ少し肌寒く陽は昇り切っておらず、空は地平線の方が淡く橙色に染まりそこから先は未だ深い藍色の空が占めていた。
だが太陽が昇るにつれ、アクアブルーへと色を変えていく。綺麗な空だ。