第7章 truth
「岩融、いるのはわかってる。いつまで隠れているつもりだ?」
「ほぉ……気付かれていたとはな」
角から出て来たのは、岩融だった。理仁は個人的に岩融に聞きたいことがあった。本人もそれを知っているのか、含み笑いを浮かべたまま理仁の言葉を待っているように思えた。
「お前……非常時であったにも関わらず、加減し続けたな」
「俺は今回の出陣時、理仁に加減しろと言われていたからな。きっちりそれに従ったつもりだ」
「皆が散散り散りになった後、何をしていた」
「せめて敵の増援が来ないようにと、高いところから傍観していたが?」
「今回の戦場……お前の力を持ってすれば、誰も傷を負わずに戻って来れたと思うがそれについてはどう思う?」
「ふん……主は俺を買い被りすぎだと思うぞ? なぜ、主以外の者達を守らなければならない?」
「……岩融……っ」
がたりと、理仁が立ち上がると岩融はおかしそうに笑って一歩、また一歩と理仁へと近付いた。近距離になったところで、岩融は屈んだかと思うとそのまま理仁の顎に手をかけくいっと上げた。
「俺が認めているのは、今のところ主のみだ。あいつらは弱い、そしてお前さんはまだまだ甘い。読みはいいが最後に甘さが邪魔をして、相手の首を落とせない。だから……あの演練の時も、三日月を中傷に追い込むことしか出来なかった。何故なら、手段を選ばず俺を出しておれば戦況は違ったからだ」
「それは俺のやり方にそぐわない」
「だから甘いと言っている。上位五位程度で満足している玉ではあるまい? のう、主よ」
「俺が欲しいのは権力でもないし、力でもない」
「そうまでして……お前さんは姉の死の原因を見つけたいのか」
理仁の眉がぴくりと反応を見せる。鋭くなった目つきで、顎を掴まれたまま岩融を理仁は睨み付けた。