第7章 truth
完全に綺麗に傷は消え、僅かな痛覚だけが残された。それも時間と共に、何事もなかったかのように消えていくだろうが……和泉守は与えられた自室で一人窓を開け浮かない顔で綺麗な月を眺めていた。
昼間の出陣での出来事を思い返しながら、繰り返し溜息を吐く。堀川と同室であったが、彼は疲れたのか和泉守よりも先に床に入っていた。規則正しい寝息を聞きながら、和泉守は月明かりに導かれるようにゆっくりを腰を上げ部屋を出た。
廊下を歩きながら、縁側で月でも眺めようとしていた矢先、先客がいたようだ。
「……和泉守か」
「あんた……まだ起きてたのか」
「報告書が溜まっていたからな」
「それは……昼間本丸から出て、出陣したせいか?」
「俺はそれくらいで仕事を溜めたりしない。色々していたら、何となく眠れなくなっただけだ」
「……何をしていたんだ?」
「知りたいのか?」
「知りたい」
思いのほか和泉守が素直にそう言うものだから、一瞬理仁はきょとんとするがすぐに微笑んで隣に座るように促した。和泉守はのっそりと隣へと腰を下ろした。月明かりが眩しいくらい輝いていて、他の灯りなどなくとも十分なくらい眩しかった。
「どうして、知りたいと思ったんだ」
「は? 知りたいって思うことに……理由なんて、いらないだろ」
「そうだな。ただ……お前は俺に対して、酷く嫌悪感を抱いていたみたいだからな。どういう風の吹き回しかと思ってな」
「……少しだけ、俺も言葉が足りなかったと思っただけだ」
和泉守は自分の手元を見つめると、何となく言いづらそうにしながら少しずつ話し始めた。