第1章 chess
「実は……山姥切様は宝条様の刀剣で間違いないのですが、前任者の記憶が残ってしまっているみたいでして。それがなんと、ブラック本丸の記憶らしく……えっと」
「ブラック本丸。田頭さんに配られた資料の中にあったな。それがどうした?」
「それがどうしたって……つまり中古商品を買ってみたらセーブデータが残ってるじゃないかっていう、あってはならない事態でございます!!」
「狐に中古商品の知識があるのか……! 博識だな」
「わたくしめはアンドロイドゆえ、普通の狐と一緒にされては困ります!」
「こんなにもふもふなのに?」
理仁は徐にこんのすけの頭を撫でた。こんのすけもまんざらではない様子で「やめてくだされ」と顔面崩壊を起こしている。面白い。すると、はっと我に返って咳払いをした。
「とにかく、このこんのすけが責任を持って政府に連絡して新しいちゃんとした、山姥切様をお送り致します。それまでは、どうかご辛抱を。任務にも出れませんので、審神者マニュアルに目を通して頂きつつ本丸を見て回って下さい」
「あの山姥切国広はどうなる?」
「勿論、こちらで刀解致します。あれは最早"ガラクタ"ですので」
「……」
にこにこと話すこんのすけに、理仁は立ち上がると背を向け部屋を出ようとする。