第6章 pursuit
「こんのすけ、函館までの座標を固定してゲートを開いてくれ」
「はい!? 貴方いきなり何を言い出すんです!? 一体何をするおつもりで……っ」
「少し黙っていろ。準備だけしていろ、いいな」
「ちょっと!? 宝条様!!?」
理仁は相変わらずの無表情を浮かべているものの、桜色の瞳は何処か焔を宿しているようにも思えた。理仁は一度自室に戻ると、徐に箪笥から軍服を取り出す。白いシャツの上から軍服に腕を通してネクタイを締めた。ブーツを引っ掴んで廊下を歩く。
「あ、主さん!? その恰好は……?」
「政府から支給された戦闘服だ。と言っても、通常これを注文する審神者はごく僅かだと聞くが。温室育ちが多いからな、ははっ」
「笑い事じゃないですよ! もしかして……助けに行くつもりですか?」
「いや、馬鹿の尻拭いだ」
「え……」
軍服は動きやすいなぁと呑気な声を出す理仁の前に、堀川が立ち塞がる。
「堀国、何のつもりだ」
「貴方は……審神者なんでしょう? 安全な場所から僕達を傍観して、ただの傍観者なんじゃないんですか? だから……兼さんは」
「戦場にも行かない癖に、主だとか生意気だなと和泉守が言っていたのか」
「口にはしませんけど……たぶん、心の中では」
「なるほど。通りで俺に対して、強い反抗心を見せるわけだ」
理仁はぽんっと堀川の肩を叩いて、そのまま素通りしていく。堀川は「ちょっと!?」と後を追いかけるのだった。
しっかりとブーツを履き、理仁は銃に弾を込め本丸の門へやってくる。すると不安そうな顔をしたこんのすけが、焦ったように理仁の足元へとすり寄って来た。